手術をせずに行なった治療例
症例1
下アゴが大きく前方に転位した著しい受け口
(13歳 中学2年生女子 )
患者さんからの声 これまで受け口の治療についていくつかの病院で相談してきましたが、どちらの病院でも手術についての説明を受けてきました。私としてはできれば手術を受けたくなく、早く咬み合わせの改善を受けたいと思っていました。たまたまこちらの先生の説明を受け、治療することにしました。今は咬み合わせもきれいになって本当にほっとしています。
手術をする場合下アゴがほほ成長が完了してから手術を行います。それは手術後のアゴの成長による後戻りを防ぐためです。そのために手術は20歳前後から行ないます。この間ずっと受け口のままで生活することになります。特に心の変化の大きい年代に受け口のままでいることは本人にとっても家族にとっても負担かもしれません。
この患者さんは骨格的に著しいアゴの前後的な問題(大臼歯関係Full ClassⅢ)と上顎歯列弓の排列不正を含んだ著しい骨格性の反対咬合です。
上下の咬み合わせが前後的に正常なときは上顎犬歯は下顎の犬歯と小臼歯の間にくるのが望ましい咬み合わせです。
この患者さんの場合、治療前の上顎犬歯の先端は下顎の犬歯と小臼歯の間から左右ともに4mm(約半咬頭)のズレがあります。これだけ大きな骨格的なズレがある場合は通常の矯正治療のみでは治療が困難で、手術による方法を選択します。
患者さんの強い希望もあり矯正治療にて改善を行ないました。 治療後、排列不正も改善され、上下の咬み合わせも望ましい状態に改善されました。
症例2
症例2 上の歯と下の歯が殆ど咬んでいない重症の受け口の不正咬合 (20代社会人女性 )
患者さんからの声 こちらの病院を知るまでは、手術でしか治せないと思っていました。病院も4箇所まわりましたが、どこも手術なしでは治らないといわれました。こちらの病院は家から少し遠いのですが、手術なしでも治療していただけるということで、ほんとにわらをもつかむ思いで通わせていただきました。 この患者さんは大変複雑な症例で、骨格的なアゴの前後的な問題(反対咬合,Full ClassⅢ))と垂直的な問題(開咬)、さらに上下の歯列ともに著しい排列の不正を伴っていて下顎の左右の犬歯は完全に歯列の外に位置しています。この患者さんの上顎の犬歯は下顎の犬歯に対して右側で一咬頭(7.0mm)、左で半咬頭(4.0mm)と後方にあり、大きな骨格的な前後的なズレが認められます。
通常反対咬合の治療法は上の前歯を前方に傾斜させ、下の前歯を後方に傾斜させて被蓋の改善を行なっています。そのために下顎の途中の歯、通常第一小臼歯(前から4番目の歯)を左右一本ずつ抜歯をして下の前歯を後方に傾斜させて被蓋の改善を行ないます。(図1 図2) しかしこうした通常の治療法ではこれだけ大きな前後的なズレを解消することは不可能です。
図1 通常の受け口 図2 通常の受け口の治療法
上の前歯が後方に、下の前歯は前方に 上の前歯は前方に、下の前歯は下の小臼歯 傾斜を示し、咬み合わせが逆になっている。 を抜歯して空隙を作り、そこに前歯を後方に傾 斜させて咬み合わせを改善する。
また、この患者さんの場合、受け口と開咬の両方の症状を伴っていて、上の前歯はすでに大きく前方傾斜、下の前歯も後方傾斜していて骨格性の受け口特有の症状を示しています(Dental Compensation )。こうしたことから通常の治療法である上の前歯を積極的に前方に傾斜させるとさらにこの開咬の症状を増悪させ、上の前歯と下の前歯の垂直的距離がさらに大きくなって咬めなくなってしまいます。また、下の前歯についても同様で、すでに大きく後方に傾斜していることから、さらに抜歯(通常第一小臼歯)をして後方に歯を傾斜させることは歯周組織(歯茎の健康状態)に対して大きな負担となることが予想され、これ以上、下アゴの前歯を後方へ移動させることは困難です。(図3)
図3 重度の反対咬合症例 図4 従来の抜歯による治療法の問題点
重度の骨格性の反対咬合では、上下の 従来の治療法を用いて、上の前歯を前に移動 アゴの前後的、垂直的なズレが大きく、 すると、すでに大きく前方に傾斜している上の 上の前歯は大きく前方に傾斜を示し、 前歯は、むしろ上方に移動してしまい、上下 下の前歯も大きく後方に傾斜している。 前歯間のスペースは更に拡大し、状態が増悪 特徴として骨格の前後的ズレに比べて する。また、下の前歯も下の小臼歯を抜歯 上下の前歯の切端間のズレは小さい。 して、その空隙に前歯を後方移動することにも 限界があり、従来の方法では被蓋の改善が 不可能である。(症例2.6参照)
こうした点を考慮して従来の治療法を用いることはできず、アゴの手術となってしまいます。しかしながら患者さんが手術を強く希望しないことから当院では独自の方法でこうした複雑な症状の改善を行なっています。
症例3
症例3 強い受け口顔貌の重症の反対咬合症例
患者さんからの声 中学頃から受け口の状態が徐々に強くなり、下アゴが上アゴに比べて大きく前方にきてしまいました。前の歯で食べ物も咬むことができず、英語の発音もしずらく大変気にしていました。 コメント この患者さんは顔の横顔はオトガイ部が大きく前方に突出し、鼻のあたりの顔の中央部が後退した典型的な受け口の顔貌をした患者さんで前歯部が大きく反対被蓋を示しています。上下前歯部の前後的なズレが大きく、骨格的に著しい前後関係の問題(大臼歯関係 Full Class III、ANB -10.5°)を含んでいます。上顎の犬歯は下顎の犬歯に対して左右ともに1歯(一咬頭)完全に後退を示して、上アゴと下アゴのズレの大きさが大きいことを示しています。また、上下の歯の傾斜は骨格関係を補うようにDental Compensation を示し、上の前歯は前方傾斜、下の前歯は大きく後方傾斜を示しています。咬み合わせも非常に深く下アゴが大きく前方回転している状態を示しています。 こうしたことから顔の側貌や咬合状態から明らかにこの患者さんは手術の適応症で、顔貌と咬合の改善を必要とし矯正治療のみでは限界のある状態です。しかしながら患者さん自身手術を強く望まなかったことから矯正治療のみで治療を進めました。他の患者さんと同様小臼歯などの途中の歯の抜歯をしないで治療を行いました。治療前示していた深い咬み合わせも被蓋の改善とともに改善されました。また下顎の後方回転に伴う治療効果からオトガイ部の突出感も軽減されました。
症例4 患者さんからの声 上下の歯のスキ間が大きくあり食事もしずらく、人と話をするのがなんとなく気がひける思いでした。以前より程度はきついほうだと聞いていましたが、今回治療を受けてちゃんと咬めるようになりました。 治療してよかったと思っています。 (28歳会社員 大阪府) コメント 開咬を示す患者さんで、通常上下の前歯切端間の距離が5mm以上の場合、外科手術を併用して矯正治療を行なっています。この症例は上下の切端距離が6.5mmを示し、大変重症のケースです。
症例5 患者さんからの声 いつも口が開いた感じと口が閉じにくいのをずっと悩んでいました。手術の可能性も聞いていましたが、手術をしなくてもよいとの先生の言葉を聞き思い切って治療を受けました。治療して本当に良かったと思っています。 コメント この症例5の開咬の患者さんは上下切端間の距離は7.0mmで症例4のケースと同様、大変重症の開咬を呈しています。
症例6
症例6 強い受け口と開咬を伴った女子高校生
患者さんからの声 以前より受け口をずっと悩んできました。 コメント この患者さんは前歯部のopen biteと著しい骨格的な反対咬合を伴った複雑な症状を示しています。大臼歯関係が左右ともFull Class Ⅲ、犬歯の位置が右側で半咬頭、左側でほぼ一咬頭の大きな前後的ズレがあります。 以前であれば、こうした大きな前後的、垂直的ズレを持つ患者さんはまず外科手術を選択していました。しかし、この症例も上記の20代社会人女性の例と同じような症状を示し、患者さんの強い希望もあり、矯正治療のみで治療を行ないました。 通常の症例であれば下顎の小臼歯左右1本ずつ抜歯を行い、下顎前歯部を後退させて受け口の治療を考えますが、このように大きなズレがある場合、通常の治療法では限界があり改善を行なうことができません。すでに下顎前歯部は後方に傾斜しており、小臼歯を抜歯して前歯をさらに後方に後退させることは非常に困難です。また、開口の症状もあり、小臼歯の抜歯をすることは治療の様相をさらに複雑にさせてしまいます。前記の患者さんと同様、手術をしないで、矯正治療のみで症状を改善することができました。 (上記 図1.2.3参照) これらの例でもあるように、手術による治療法が必要であると他の医院で説明を受けていても必ずしも手術をしなくても治療は可能です。一度ご相談ください。
症例7 上の前歯が大きく出ていていつも口が閉じにくく、口元をずっと気にしていました。
症例8 受け口の状態が強くずっと悩んできました。上アゴと下アゴのズレが10.0mmと大きくこれまで
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・出口 敏雄、増永 守雄ほか:片顎抜歯と第三大臼歯の意義 日本矯正歯科学会雑誌 40巻 第2号 P251~260 1981 共著
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